美少女フィギュア業界のブロガーとして、約17年のキャリアを持つmoeyo.comの管理人「もんぷち。」が、美少女フィギュアメーカーや原型師さんに、気になったことをあれこれとお聞きする「moeyo.comサポーターズ」限定インタビュー記事「もんぷち。が聞く!」本当に久しぶりとなる第15回目は、「OZ」という名義で商業原型師をされていた経歴をお持ちの新進気鋭のフィギュアメーカー「ミメヨイ」のCEO、黒川さんに、あれこれお伺いしました!画像はミメヨイさんの代表的なフィギュアの一つ「アズールレーン 大鳳 -恋慕のコンパニオン-」。
*こちらはファンティアにて募集中していた有料会員「moeyo.comサポーターズ」加入者限定コンテンツとして2022年05月に投稿した記事の一般公開となります。記事内容に関しましては、ほぼ投稿当時のまま掲載しておりますため、現在と状況が違うものもあります。予めご了承ください。
ミメヨイの由来は「見目好い」という日本語から来ております。
もんぷち。(以下 も):本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、御社の名前(ミメヨイ)の由来や立ち上げの経緯など教えてください!
ミメヨイCEO黒川雄一郎さん(以下 黒):よろしくお願いいたします。
まずミメヨイという名前にした経緯ですが、もともとは中国生産工場出資のメーカー「インターステラー」として始まりました。
ですが2010年代後半ころ、美少女フィギュアは過剰な表現の模索やそれに伴う開発の複雑化、現地の人件費の高騰などで工場にとっては難しい商材となってきていた為、会社としてスタートした直後に協力を切られるという事態となり、単独で動かさずを得なくなりました。
その際、協業ということで納得していた「インターステラー」という名前が実はそんなに好みではなく、どうせ新しく出発するならと、2018年10月に会社名を現在の「ミメヨイ」としました。
ミメヨイの由来は「見目好い」という日本語から来ております。
日本語由来のフィギュアメーカー名が少ないと感じてまして、少しでも覚えて頂きたいと考えこの名前にしましたが、逆に覚えにくい読み方だったようで…。
いまでも「ミヨメイ」と間違えられる事がありますが、そもそも一つのメーカーとして覚えて頂けるのであればどちらで覚えられていてもうれしいと感じております。
余談ですが、その(協力を切られた)工場のスタッフの方々とは今でも仲良くしております(笑)
原型師「OZ」からメーカー起業へ至った経緯
も:個人的に結構ユニークな名前だなと思っていましたが、そういった経緯があったんですね。
しかしいきなり協力を切られるというのも大変でしたね。
黒:圧倒的に中国工場に頼ることでしか生産ができない現状を考え工場=メーカーの形がメーカーとして理想と考え協力を仰いだのですが、その構想は早くも崩れ去ってしまいました(笑)
しかし、今依頼している工場も結果的には思い描いていた協力関係に近い形で協力頂いているので、最終的にはうまくいってよかったなと感じております。
も:本当に良かったです(笑)
しかし、そのような危機的状況に陥りながらもフィギュアメーカーの立ち上げをあきらめなかったというのには、なにかとても強い思いを感じたのですが、そのあたりお聞きしても良いでしょうか?
黒:フィギュアメーカーへの憧れはずっと持っていました。
そもそも自分がフィギュア業界でしか生きられない不器用な人間だと考えていますので。
もともとは「OZ」という名義で商業原型師としてフィギュア会社に勤めておりましたが、先輩の独立もあり、また周りのメーカーを経営する友人達の応援とがあり会社を立てるきっかけとなりました。
も:「OZ」というお名前きいたことあります!
もしよろしければ黒川さんの経歴やメーカーを立ち上げるまでに至った経緯をもう少し詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?
黒:20代のころは模型店などに勤めながら活動しておりました。26歳に縁あって代アニ(代々木アニメーション学院)のフィギュア科講師などさせて頂きながらディーラー活動をしておりました。
30歳の時に「小狐」を言う作品でワンダーショウケース第20期(2010年)に選出していただき、フリーの商業原型としても活動するようになりました。
徐々に原型というものから製品としてのクオリティというものに興味が変わった
も:商業原型された作品で教えて頂けるものございますか?
黒:そうですね…。エンブレイスジャパンさんの「東方プロジェクト 魂魄妖夢 ver.OZ」「黒の守り手 ディアボルス・マクロドンティア:ティボルタ」「STREET FIGHTER III 3rd STRIKE Fighters Legendary リュウ」、メガハウスさんの「ハイプリエステス TVアニメ「ペルソナ4」 里中千枝」などが私が原型を務めた作品となります。
黒:しかし商業原型師としては自分の力不足を感じ、徐々に原型というものから製品としてのクオリティというものに興味を持ち始め、原型師としての立場からギリギリまで製品に注力できるディレクションの仕事の方へのシフトを目指そうかなと考えていた時に、エンブレイスジャパンさんにお声をかけて頂いたこともあって、フリーからメーカー就職の道を選び、原型をやりつつも後輩原型師のディレクションなどをしていました。
自分の想い描いていた製品作りをしたい
黒:ただ、やはり会社に入ってしまうとその会社のやり方というものがありますので、自分の想い描いていた製品作りをするのは中々難しいなと考え始め、そういった気持ちを当時「アクアマリン(*1)」のフィギュアディレクターをしていた原型師ゆきうさ(*2)さんに相談したところ、ならばという感じで誘われまして、アクアマリンのほうに転職しました。
アクアマリン時代に、仕事として中国の生産管理を直で勉強できたおかげで製造ノウハウが蓄積でき、また管理次第で製品の質を上げることが可能なことを知って、製造がめちゃくちゃ楽しくなり、製造側へのモチベーションがさらに上がっていったところ、ゆきうささんが東京フィギュアに参加し、メーカー起業(イージーエイトのこと)したんです。
ほか「リコルヌ」など、アマチュア同世代の仲間が個人メーカー立ち上げるのを多くのを目の当たりにし、苦しみながらも自由に仕事をする姿が羨ましく、自分も自社メーカーを設立したい!との思いを強くし、アクアマリンを退社して、起業の道を選びましたました。
その思いがあったから、メーカー起業をあきらめずに今日までこれたと思います。
アズールレーン
も:なるほど。それだけ強い思いがあったからこそ頑張れたということですね!
そんなミメヨイさんの発売のアイテムで、特に人気、もしくは印象的なアイテムはございますか?
黒:そもそもほとんど製品を出していないので限られた中とはなりますが、大鳳、バッチ、ル・マラン、プリンス、デュークと、本当にたくさんの皆様のご予約のおかげで何とか運営していける状態となっております。ありがとうございます。
まだ、製品開発状態ですので皆様のご期待に添える様 開発を頑張って参ります!
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も:やはりそのあたりとなるのですね!
「ミメヨイ」さんといえば「アズールレーン」関連という印象が強いと思います。メーカー立ち上げ時に選定してシリーズ化するというのは結構重要な決断だったと思いますが、「アズールレーン」で行こうと決めたきっかけというか、何かエピソードみたいなものってございますでしょうか?
黒:自分が起業した当時「FGO(Fate/Grand Order)」がとても人気のコンテンツでしたので、自分ももちろんやってみたかったのですが、あいにくもう(版元さんが)受けつけれる数的に満杯となっている時期で、版権申請がもうできなかったんです。
そんな中Twitterで見かけた「平海(ピンハイ) 」の水着イラストを見かけ、すごく好みだったので「アズールレーン」に興味が出まして、他のコンテンツ内容も自分の好みにドンピシャで、どんどんはまって行きまして。
そのタイミングで本当に偶然なんですが、同じく東京フィギュアに参加されている「プラスワン」さんが「アズールレーン」のレースクイーンシリーズをやるという話がありまして、生産を「アズールレーン」が好きという理由から、うち(ミメヨイ)でやることになったんです。
さらにこれまた偶然、代アニ講師時代の教え子であり、今では立派な商業原型師となった「てれ」さんがワンフェスであの『「平海(ピンハイ) 」の水着イラスト』のガレキを出すと知り、これはもうやるしかない!とてれさんに商用として是非出したいと交渉し、ミメヨイから「アズールレーン 平海 遊興の夏? (Ping Hai -Merry Summer-)」として出させていただく運びとなりました。
そういった流れもあって、気が付けば「アズールレーン」とのかかわりが深くなっていった次第です。
(「アズールレーン」のレースクイーンシリーズは最終的には発売元も「プラスワン」ではなく「ミメヨイ」となった)
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個人ならではできることをメーカーでしちゃう
も:最初から狙っていたというよりかは、偶然が重なった結果「アズールレーン」のシリーズ化にたどり着いたという感じなのですね!
ところで(インタビュー時点では)新作となる「アズールレーン ブレマートン 熱々トレーニング」では、どことは言いませんがかなり「攻めた表現」をされていると思います。その点に関して版元であるYostarさん的にはどのような反応だったのでしょうか?
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黒:ミメヨイのポリシーとして「ガレージキットのような尖った表現を商業原型に盛り込む」「個人ならではできることをメーカーでしちゃう」ということがあげられますが、もちろんこのポリシーの実行には版元様の寛大なご厚意があればこそになります。
幸い、「ミメヨイ」は「アズールレーン」のキャラクターを多数制作させて頂いておりますが、造形表現に対し、Yostarさんは面白いと感じてくれていまして、むしろYostarさんの方から「ここをもっとこんな感じで表現してほしい」といった感じでこちらが想定して制作した以上の表現で修正指示がくることもあります(笑)
も:それはなんというか。素晴らしいことですね!(笑)
黒:版元(Yostar)様からの頂ける造形への熱量も高いのも相まって、他とは違った面白いアプローチのフィギュアをださせて頂いているのだと思います。
そういう意味では、本当にそういう表現を許容していただける版元様に感謝しかありません。
まさか工場に行けなくなる、なんて思ってもみなかった事態
も:とても興味深い話をありがとうございます!これからもミメヨイさんの「アズールレーン」新作も期待せざるを得ないですね!(笑)
ほか、ミメヨイさんにまつわる面白いエピソードやこだわった話、失敗談、感動した話など何かございましたら教えて頂けますでしょうか?
黒:面白いエピソードという点では「工場との協業」が出だしですっこけたという話以上のものはないかなと思います。
失敗…といえば、予測できなかったコロナの問題になります。
もともと、メーカー勤務時期、開発を現地で行っていた強みがあり、そこを活かそうというコンセプトでメーカーを立ち上げたのですが、まさか工場に行けなくなる、なんて思ってもみなかった事態となってしまっているのが最も痛く、現在も続いてしまっている失敗談ですかね。
いまでも解除されればすぐにでも中国に入りたいと思ってます!
どこまでできるかはわかりませんが、少しづつでも皆様の信頼を得られるような製品品質を目指しこれからも頑張って参ります。
も:ありがとうございます。最後となりますが、ミメヨイさんのファンの方々に何かございましたら!
黒:まだまだ駆け出しのメーカーで、さらに従業員が極端に少ないことから発表まで時間がかかり皆様にご迷惑をお掛けしております。
どこまでできるかはわかりませんが、少しづつでも皆様の信頼を得られるような製品品質を目指しこれからも頑張って参ります。
まだまだ、商品発送後に厳しいご意見なども頂いておりますので
しっかりと受け止め次の製品に繋げて参りますので、何卒お力添えのほどよろしくお願い申し上げます。
も:ありがとうございました!
*1 「アクアマリン」は日本のフィギュアメーカー。2020年8月に倒産した。
*2 「ゆきうさ」さんは2016年にフィギュアメーカー「イージーエイト」を立ち上げた経歴を持つ、ワンダーショウケース第18期(2008年夏)に「浮き輪プレネールさん」が選出されている原型師さん。「東方Project フランドール・スカーレット」「アイドルマスター ミリオンライブ! 天海春香 -キラメキ進行形!-」「Fate/Apocrypha “赤”のセイバー -モードレッド-」などのアクアマリンから発売されたフィギュアの原型を多数担当されている。
インタビューは以上となります。
お話しいただいたミメヨイのCEOの黒川さんは物腰が柔らかな印象ながらも、終始誠実さと熱意を感じる方話し方をされる方で、想いのあまりお話が長くなってしまいました(笑)。
その姿はまさに黒川さんがあこがれていた「苦しみながらも自由に仕事をする姿」を体現しているなあとまぶしく感じました。
自分ももう17年もこのブログを「好きなもの」として運営させてもらっていて、これもひとえに応援して下さる皆さんのおかげだと思っています!本当にありがとうございます!
…と、いうわけで、今回は久々となるインタビューをお届出しました!
文:もんぷち。
*こちらはファンティアにて募集中していた有料会員「moeyo.comサポーターズ」加入者限定コンテンツとして2022年05月に投稿した記事の一般公開となります。記事内容に関しましては、ほぼ投稿当時のまま掲載しておりますため、現在と状況が違うものもあります。予めご了承ください。
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